いわき市の復興を願い:湯本温泉、古滝屋主の里見氏へのインタビュー
いわき市湯本、日本三大古泉(道後、有馬、湯本)の一つです。そんなとても古い歴史を持つ湯本温泉ですが、この地で、江戸時代まで遡る老舗旅館の主、里見喜生氏を訪ね、いわき市の復興を願う対談を行いました。里見氏の温泉ビジネスに対する深い造詣に触れながら、これからの「いわき」を考えることとします。
注:以下「」内の文章は、里見氏の発言をできるだけ忠実に記載しました。
注:以下「」内の文章は、里見氏の発言をできるだけ忠実に記載しました。
湯本温泉
湯本温泉、そして福島の温泉について、概要を知ると意外な一面が理解できてきます。とても古い温泉町なので、今の状況について訪ねると、
「実は温泉宿は、30軒近くありこの15年減っていないのです。他の福島県の温泉街があるところは50%も減ってしまい、あの賑わいはどこへ?というところも...」
平出身の筆者のイメージは、こういってはなんだが、湯本は長期低落。確かに温泉らしい湯は特筆すべきだが...。
「経営者は確かに高齢になりました。年金も受け取れる年代です。しかし、他の温泉街に青年会は数名しかいないのに、湯本は10名もいます。湯本の可能性はあります。」
「実は温泉宿は、30軒近くありこの15年減っていないのです。他の福島県の温泉街があるところは50%も減ってしまい、あの賑わいはどこへ?というところも...」
平出身の筆者のイメージは、こういってはなんだが、湯本は長期低落。確かに温泉らしい湯は特筆すべきだが...。
「経営者は確かに高齢になりました。年金も受け取れる年代です。しかし、他の温泉街に青年会は数名しかいないのに、湯本は10名もいます。湯本の可能性はあります。」
【参照 URL(外部サイトへリンクします)】
-
http://www.iwakiyumoto.or.jp/
いわき湯本温泉旅館組合 -
http://wakadanna.livedoor.biz/
古滝屋主人、里見氏のブログサイト
温泉ビジネスの変化
一方で、外観というか、いわきは古いものを大事にすること少なく、どんどん新しくしてしまい、それもバブル期を最後に市場ニーズの変化についていけてないらしい。その結果、うらぶれていく印象がどうして強い。 (平城があった城下町平に古い町並みがない、これについては、戊辰戦争による荒廃もあるが、明治3年と39年の平の大火災により大概の建造物が焼け落ちたと父から聞かされた。父は母から明治39年の大火災を経験談として聞いたという) いわき市は普遍的なテーマでしっかりと根付く地元の文化的発信能力が低い気がする。そして、全国的な知名度も誇るスパリゾートハワイアンズが、常磐ハワイアンセンターからイメージアップしてよりテーマ性の強い総合的なリゾート路線に向かえたことも、反面、湯本を時代に取り残された印象にしてしまうのではないでしょうか?
【参照 URL(外部サイトへリンクします)】
-
http://www.hawaiians.co.jp/
スパリゾートハワイアンズ
団体旅行の終演
「私は、バブルの崩壊後、旅行代理店任せに全国から団体さんを呼び込んだ旅館ビジネスが終わったと思い、なんとか、生まれ変わる湯本を模索してきました。世界のリゾート地や、海外の成熟した旅行文化から見て取れるのは、少人数で個性的に楽しむツーリズムです。その地の文化、見所を楽しみ、散策しながら楽しむ温泉旅行でしょう。私が理想として見ているのは、見事にその路線で変革に成功した、有馬温泉です。神戸、大阪、周辺からレベルの高い個人、あるいは少数グループの旅行客を呼び寄せることが出来るように生まれ変わりました。」
福島、いわき、そして文化を発信したい
確かに筆者も過去仕事で訪れた米国、欧州では、異文化に接する楽しみが旅行の大抵を占めるわけですから、日本でも団体、宴会の一時代を過ぎて、成熟した旅行客が望むは、良質な散策、自分の知性を磨けるようなその地の香りなんだろうと思います。では、いわきでは、どのようにアピールして新しい湯本のイメージを作ればいいでしょうか? 「湯本、いわき、そして福島と見て考えるべきです。福島は横に長く、会津、中通り、浜通りと同じ季節でも天候も気温も文化も違う広い地域です。アクセスは、首都圏からいわきなら2時間半、会津でも3時間半~4時間、特急、新幹線、高速道路、高速バスとニーズによって選択肢が豊富です。会津でスキー、中通りでゴルフ、いわきでサーフィンと、冬場で3つのスポーツが楽しめるなんて日本で唯一です。こんな驚かし方もありますが、つまり、いわき市、福島県の良さ、文化をはっきりと伝えていける力が研鑽しなくてはいけません。いわきの自然、文化、見所を市民個人個人が発信できる力なんです。ちょっと悲しいことなんですが、いわきの良いところを挙げてみて。とお願いすると意外のほど自分たちの街の良さを挙げることができないんですよ。」
いわきの紹介、そして神秘なる温泉とは
里見氏の話を聞いていると、不思議に子供の頃の平の街の様子、七夕のこと、ボンネットバスのこと、盆踊りのこと、海水浴のことなどなど、懐かしくそして輝いていたころの故郷を思い出します。30数年前いわきを出て暮らすようになり、他の地で地元のことを説明しようと思うと、ひらがなの地名、海が綺麗、魚が美味しい、だったかと思うと、背戸峨廊や阿弥陀堂のことがすぐには思い出せない自分が恥ずかしい。
話を再び温泉について訪ねてみよう。湯本の温泉はどんなお湯なんだろう?
話を再び温泉について訪ねてみよう。湯本の温泉はどんなお湯なんだろう?
1万年前の真空パック水、化石海水のお湯です
「湯本の湯量は無限です。どういうことかというと、海洋深層水が染みこんで1万年前の地層と混じって出来上がっています。ですから、枯れるということはあり得ないのです。豊富な湯量と切り傷によく効くという効用が特徴です。湯本の源泉の特徴として、空気に触れると変質することから、採湯してからできるだけ空気に触れずに湯にはると良いのです。これを理想的に実現しているのが湯本では、スパホテルスミレ館です。源泉をそのまま空気に触れずにお風呂にはりますから、エメラルドグリーンの神秘的な色合いで、1万年前の真空パック水、化石海水のお湯に入れるわけです。ちょっとロマチックでしょ?1万年前のお湯に入るって。」
温泉といえば、源泉掛け流し、風流な湯ノ口から滔々と流れる湯の流れ、注がれる音を聞きながら...と思えば、空気に触れないように風呂の中から湯を足しているというなんともいわれぬ蘊蓄である。
温泉といえば、源泉掛け流し、風流な湯ノ口から滔々と流れる湯の流れ、注がれる音を聞きながら...と思えば、空気に触れないように風呂の中から湯を足しているというなんともいわれぬ蘊蓄である。
【参照 URL(外部サイトへリンクします)】
ビジョン
「湯本は、県外からのお客様をたくさん迎入れる団体ビジネスから、変われませんでした。県内でお客様の足が上向いているのは、高湯温泉ですか。温泉旅館として見ると東山の向瀧もいいですね。ひとこと、宿泊ビジネスといっても幅があり形態として20種類ぐらいあるんです。ホテル、旅館だけではないのです。旅行に未成熟な時代から成熟してニーズが多様化してきました。これからの時代、湯本を変えていくにはしっかりとした温泉ビジネスの分析と目指すべきビジョンが必要です。たとえば、ドイツのような温泉と医療が融合したような、健康に対して科学的なアプローチをしていく路線。湯本は江戸時代は湯治場で、刀傷を追った侍がたくさん、訪れていたんですね。そして最終的には、伊豆に行くのと、湯本へ来るのは距離、時間的にはさほどかわりがないのですから、伊豆に行くのと湯本へ行くのが比べられる時代、そうなるには長い時間がかかるでしょう。簡単なことではありません。旅行成熟期におけるニーズの違い、価値観の違い、子供達へ何を託すかなど、描くべき必要のあるストーリーが必要です。ですが、先ほど伝えたように市民のひとりひとりがいわきの良さを伝えることが出来る能力を身につけていかなくてはなりません。とても時間がかかりますが。」
【参照 URL(外部サイトへリンクします)】
-
http://www.naf.co.jp/azumatakayu/
高湯温泉観光協会 -
http://www.mukaitaki.com/
会津東山温泉 向滝 -
http://www.visit-germany.jp/JPN/nature_active_recreation/health_resorts_spas_tlkur.htm
健康のために休養をとりたい人には、鉱泉療養浴場...
終わりに
里見氏の話を聞きながら、私なりに思うところをまとめてみると、確かに地元温泉をこよなく愛する文化、あるいはその文化継承を尊ぶ精神は、希薄である。湯本は、平、小名浜、勿来の三大市街地からほぼ良い距離(バスで20~30分)であることから、県外からの団体客中心から、地元に愛される温泉街としての展望が必要だと思う。震災でかなりダメージを受けたが、四倉のスーパー銭湯(蟹洗い温泉)などは、全国的にある典型的な日帰り温泉ではあるが、同じような形式を湯本にとは思わないが、地元立脚の新しい温泉ビジネスの形は望まれる。話はそれるが、今の湯本は、原発復旧の作業者、関係者でほぼ満室である。この先、かなり長期にわたり、営業いらずで満員御礼の状態が続くかも知れないのである。ある老舗旅館の女将は、なんとか原発を治めてくれる現場の人々のために出来るだけのサービスをしたいと漏らしているそうだが、今のいわきの未来は原発の早期安定にかかっているのである。そのようななか、湯本温泉の再興を考えることは、未来予想においても重要な議論がなされるだろう。 裸のつきあい、浜の人も町の人もそして山の人も、皆で地元の湯本温泉でリラックスしながら、いわき市の未来を考える、そのようなコミュニティーセンター的な機能を持つ温泉のシンボル的な施設も、検討できるのではないか?可能であれば、東電から事業委託形式で、そのような施設の建設を早期に計画するのも行動の一つとして、湯本地区の市民で押し上げていくのも復興の一つの形ではないだろうか?
【参照 URL(外部サイトへリンクします)】
-
http://kaniarai.com/
蟹洗い温泉
著者
2011年5月30 日
川崎市宮前区在住
永山辰巳
tatsumi.nagayama@mac.com
インタビュー:里見喜生(よしお)氏
創業元禄八年 元禄彩雅宿 古滝屋主
川崎市宮前区在住
永山辰巳
tatsumi.nagayama@mac.com
インタビュー:里見喜生(よしお)氏
創業元禄八年 元禄彩雅宿 古滝屋主
【参照 URL(外部サイトへリンクします)】
-
http://www.furutakiya.com/
いわき市湯本温泉 古滝屋